完全成果報酬の補助金支援サービス
補助金の右腕

収益納付について知っておくべきこと

ものづくり補助金採択発表前にやっておくこと

「補助金は融資と違って返済は不要でもらえるお金」

このようなことを聞かれたことがある方は多いと思いますが、実はこれは嘘です。

正確には、
原則返済不要、でも補助金を使って立ち上げた事業が儲かったら返す必要のあるお金

この儲かったら返すというのを「収益納付」と呼んでいます。
この収益納付は、補助事業実施後に行われる毎年の事業化状況報告の内容に基づいて計算されます。
この仕組みを知らないがために、気がついたら補助金返還しろと言われた!とならないよう、最低限のルールは知っておくべきです。
ということで、今回は収益納付についてご説明いたします。
※以降は「ものづくり補助金」における収益納付のルールをもとに記載していますが、他の補助金においても基本の考え方は同じです。

前提として知っておくべきこと

まず収益納付の納付額を算出する計算式に使われる数字を紹介します。以下の表の通りです。

番号 用語 意味
1 補助事業に要した経費 「実績報告」で報告した補助事業全体にかかった経費(税込)
2 補助金確定額 支給された補助金額
3 控除額 初年度は
「1.補助事業に要した経費」-「2.補助金確定額」で計算。
つまり、自己負担した金額。
控除額を超えて利益が出ると収益納付が発生する仕組み。
4 本年度収益額 補助事業の営業利益。(補助事業の売上から売上原価、販管費を引いて算出)
毎年の事業化報告で報告をするもの。
5 本年度までの補助事業に係る支出額 通常は、1の「補助事業に要した経費」と同じ。

収益納付が必要となるとき

これらを踏まえて、以降で収益納付の算出方法について説明します。

毎年の事業化報告において、まず「4.本年度収益額」を出します。
ここで赤字が出れば、収益納付が発生することはありません。
ちなみに「4.本年度収益額」は、会社全体の営業利益ではなく、補助事業単体で算出した営業利益になります。
会社全体では利益が出ていたとしても、補助事業単体で赤字であれば収益納付は発生しません。

次に、「4.本年度収益額」がプラスになった場合を見ていきます。
補助事業で利益が出た!となっても、すぐに収益納付が発生するわけではありません。
「3.控除額」を考慮します。
具体的には、以下を計算します。

「4.本年度収益額」ー「3.控除額」
これがマイナスの間は、収益納付は発生しません。
ただし、マイナスの場合は「3.控除額」から「4.本年度収益額」を引いた数字が翌年の「3.控除額」になります。
つまり、「3.控除額」は補助事業で利益が出れば、利益分だけ徐々に減っていくということになります。
では、「4.本年度収益額」ー「3.控除額」がプラスになる場合は、どうなるのかというと、収益納付が必要となります!

収益納付の計算方法

では、実際にいくら支払うのかを見ていきます。
結論は、以下の計算式になります

「4.本年度収益額」 ー 「3.控除額」)×(「2.補助金確定額」➗「5.本年度までの補助事業に係る支出額」
この式は2つの式の掛け算です。
前半の「4.本年度収益額」 ー 「3.控除額」はすでに説明済みです。
これに後半の「2.補助金確定額」➗「5.本年度までの補助事業に係る支出額」を掛けています。
後半の計算式は、ざっくり「補助率(※)」だと考えてください。
補助率2/3で補助金の交付を受けたのであれば、2/3を掛けるという意味です。
(※)ただ、正確には補助率ではないです。補助率よりは小さな数字になります。が、話をわかりやすくするためあえて補助率と書いています。正確には、それぞれの数字を入れて計算します。
ここまでをまとめると、
収益納付する金額は、補助事業の儲けから控除額を引き、それに補助率(※)をかけて算出する。
この金額が(ざっくり)収益納付として国に戻さないといけない金額になります。
なお、この報告は通常5年間実施されますので、5年間は収益納付の可能性があるということになります。
5年経過後は、収益納付の対象からは外れますので、気にする必要はなくなります。
また、収益納付は「2.補助確定額」を超えることはありませんので、累積の収益納付額が「2.補助確定額」に達した時点で収益納付は終了となります。

考慮すべきこと

そもそも収益納付は、補助金で実施した補助事業が儲かったら、返してね!という趣旨のものになります。
そのため、たくさん儲かったのであれば、収益納付もそれほど気にする必要はなく、どんどん返していくべき!と思うのですが、とはいえやっぱり返せと言われると心情的に・・・と思われる方もいるかもしれません。

そこでできるだけ収益納付を発生させないようにする真っ当な方法について解説いたします。

収益納付の計算式を見ると、できるだけ収益納付をしないようにするためには「1.補助事業に要した経費」がポイントになることがわかります。
「1.補助事業に要した経費」が多ければ、収益納付に達するまでの「3.控除額」が大きくなるからです。

そのため、補助金の申請時点から「収益納付」のことを考えて、経費計上しておくことが大切になります。

実際はたくさん設備を買うけれども、補助金額を考えると一部の設備で補助額の上限になるため、補助対象から外して申請するということは、よくあると思います。
しかし、ここで全ての設備を補助事業として投資する形で申請しておくことで、「1.補助事業に要した経費」を多くすることができます。
以下、具体例で説明します。(消費税はないものと仮定します。)

全体の設備への投資額は5,000万円。
補助上限額1,000万円、補助率2/3の補助金があった場合、申請方法としては、以下の2パターンが想定されます。
① 「補助事業に要した経費:5,000万円」「補助金申請額:1,000万円」と申請する
② 「補助事業に要した経費:1,500万円」「補助金申請額:1,000万円」と申請する
①の場合は、「1.補助事業に要した経費」として5,000万円計上でき、「3.控除額」が5,000万円-1,000万円 = 4,000万円 と大きくなります。
逆に、②の場合の「3.控除額」は、1,500万円-1,000万円 = 500万円となります。

以上のように、①の形で申請することで「3.控除額」が大きくなり、できるだけ収益納付にならないようにすることができます。
ただ、これにはデメリットもあって、5,000万円分を補助金申請に入れると、その全てが補助事業の管理下に置かれるため、実績報告の手間が増えたり勝手に売却・移転・破棄をしてはいけないなど、管理が煩雑になります。(②の場合は申請した1,500万円分のみ補助事業の管理下になるので、残りの3,500万円分の設備は会社が自由に管理することができます。)

以上より、どちらがいいのかは、申請時にしっかり考える必要があります。

採択後のノウハウとして今回は「収益納付」について解説いたしました。
このように、補助金申請は、単に採択すればいいわけではなく、採択後のことを考えた上で、実際の申請をするべきです。
そうした意味では、もし補助金の活用を専門家に依頼する場合は、専門家に採択後のことまでしっかりとフォローしてもらえる体制・知見があるのかをよく見極めて支援を依頼することをお勧めいたします。

本内容はYouTube動画でも解説していますので、こちらもご覧ください。


   

ご相談内容別窓口

この記事を書いた人

平阪 靖規

平阪 靖規

2012年4月に「中小企業診断士」登録。2013年04月の独立後より補助金を始めとする中小企業施策の支援に従事。中小企業施策を企画する行政と利用する中小企業・小規模事業者の橋渡し役としての任務を全うすることに力を注いでいる。株式会社コムラッドファームジャパン 代表取締役。

おすすめ記事

どのページをお探しですか?