設備投資を実施した際、固定資産税の特例を受けられる制度があります。
2022年度までは、対象となる設備が限定されていたのですが、2023年度からその間口が広がりました。
そのため多くの事業者様で節税対策として固定資産税の特例を活用することができるようになりました。
本ブログでは、固定資産税の特例についてご紹介いたします。
先端設備等導入計画について
「先端設備等導入計画」は、中小企業が設備投資を通じて労働生産性の向上を実現するための計画です。
設備導入をする(設置場所となる)市区町村(※)に「先端設備等導入計画」を提出し認定を受けることで、税制支援や金融支援などの支援措置を利用することができます。
※対象とならない市区町村もあるため事前の確認が必要です。
先端設備等導入計画の主要要件
計画期間 | 3年間、4年間又は5年間。 |
労働生産性 | 計画期間において、基準年度(直近の事業年度末)比で労働生産性が年平均3%以上向上すること。 算定式:(営業利益+人件費+減価償却費)/ 労働投入量(※) ※ 労働者数 または 労働者数 × 1人当たりの年間就業時間 |
先端設備等の種類 | 労働生産性の向上に必要な生産、販売活動等の用に直接供される下記設備 具体的には、機械装置、測定工具及び検査工具、器具備品、建物付属設備、ソフトウェア |
計画内容 |
※市区町村によって、対象設備や地域などが異なります。 |
固定資産税の特例について
「先端設備等導入計画」の認定を受けた中小企業者のうち、一定の要件を満たすと固定資産税の特例を受けることができます。
対象者 | 資本金1億円以下の法人、従業員数1,000人以下の個人事業主のうち、先端設備等導入計画の認定を受けた者 |
対象設備 | 認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の確認を受けた投資利益率5%以上の投資計画に記載された以下の①〜④の設備
① 機械装置(160万円以上) |
その他の要件 | ・生産、販売活動等の用に直接供されるものであること ・中古資産でないこと |
固定資産税の特例 | 3年間に限り、1/2に軽減。 さらに、賃上げ方針を計画内に位置付けて従業員に表明した場合は、以下の期間に限り、1/3に軽減。 ・令和6年3月31日までに取得した設備:5年間 ・令和7年3月31日までに取得した設備:4年間 |
設備の取得時期 | 「先端設備等導入計画」の認定後に設備を取得することが必須。 認定前に設備取得した場合は対象になりません。 |
万が一、計画した投資利益率の達成ができなかった場合、税制適用の取り消しは行われるのか。 | 税制適用の取り消しなどはありません。 |
従来の制度では、工業会という第三者機関が発行する証明書がなければ固定資産税の軽減措置を受けることができませんでした。
しかし、新制度では、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の確認を受けた投資利益率5%以上の投資計画に記載された該当設備であれば固定資産税の軽減が受けられるようになりました。
つまり投資計画を作ることができれば固定資産税が軽減されますので、従来よりも申請の間口は広がったと言えます。
賃上げについて
今年度の制度では、賃上げ方針を示すことにより軽減率や期間が有利になります。
具体的な要件は以下となっています。
何をしなければいけないのか。 | まず、従業員へ賃上げ方針を表明したことを証する書面を作成し従業員に表明します。 ※表明書には従業員代表の署名・捺印が必要となります。 |
賃上げ幅は? | 雇用者給与等支給額の増加率が1.5%以上となるように表明する。 増加率 = (A-B)/B で算出。 A:計画認定の申請日の属する事業年度 または 当該申請日の属する事業年度の翌事業年度の給与等支給額 B:当該申請日の属する事業年度の直前の事業年度の給与等支給額つまり、先端設備等導入計画を申請する期もしくは翌期に、前期よりも賃上げをしてくださいという意味です。 |
雇用者給与等支給額には何が含まれるか。 | 適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等(俸給・給料・賃金・歳費及び賞与並びに、これらの性質を有する給与)の支給額 と定義されています。 簡単に言えば、社員、パート・アルバイト、日雇い労働者を含む方々に支払う給与・賞与です。役員、使用人兼役員は含みません。 |
賃上げ表明したが、実際に賃上げができなかった場合、税の追納等はあるのか。 | 計画期間中の経済情勢等により必ずしも賃上げに至らない場合もあるため、単純に賃上げできなかっただけでは税の追納などは発生しません。 |
賃上げ方針を表明していないことが発覚した場合はどうなるのか。 | 賃上げに関する特例部分(特例率1/3の適用)については適用できなくなります。 |
結論
前述の通り、これまでは固定資産税の減免処置を受けるには導入する設備が限られていました。
しかし、新しい制度からは設備そのものは(極論)なんでもよくて、投資利益率が伸びる投資であれば固定資産税の軽減の対象になります。
固定資産税は、設備投資の金額が大きくなるとそれなりの金額が毎年請求されることになります。
ぜひ節税対策の1つとして本制度をご利用ください。
利用には認定支援機関による先端設備等導入計画と投資計画の確認が必要となりますので、必ず事前に認定支援機関までご相談ください。
当社は認定支援機関として多くの先端設備等導入計画を支援してきましたので、お気軽にご相談ください。
参考
固定資産税の特例措置に関する旧制度と新制度の比較
項目 | 旧制度 | 新制度(法改正後) |
特例率・期間 | 3年間、特例率はゼロ〜1/2の範囲で自治体が条例で定める割合 | 3年間、特例率1/2
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賃上げした場合の特例率・期間 | 特例なし | ① 令和6年3月31日までに取得した設備 → 5年間、特例率1/3 ② 令和7年3月31日までに取得した設備 → 4年間、特例率1/3 |
設備の要件 | 以下の①及び②の要件を満たす設備 ① 生産性に関する指標が旧モデル比で年平均1%以上向上 ②販売開始時期の要件 ※上記を工業会証明書で要件を満たしていることを証明 |
年平均の投資利益率が5%以上となることが⾒込まれる投資計画に記載された投資の⽬的を達成するために必要不可⽋な設備
※認定経営⾰新等⽀援機関による確認が必要 |
対象設備 | ①機械装置 ②⼯具 ③器具備品 ④建物附属設備 ⑤構築物 ⑥事業⽤家屋 |
①機械装置 ②⼯具 ③器具備品 ④建物附属設備 → ⑤構築物、⑥事業⽤家屋は対象外 |